簾(すだれ)
「すだれ」は、みなさんもご存じのように、竹を細く割り、削ったものや、ヨシなどを糸で編み並べて、日よけや、へやのしきりに使うものです。
さて、すだれの語は早く、*『延喜式(えんぎしき)』や『万葉集』にもみえています。御簾(みす)もすだれの一種で、古代の貴族の住宅には、夏に限らず、母屋や庇(ひさし)に常時かけて、一種の間仕切りとしても用いられました。
このような習俗は現在でも、神社などに残されています。
季節の変わり目の模様替えに、部屋を仕切っていた障子や襖を取り外し、室内を広々とさせ、かわりにすだれをかけると、
ほんとに涼しそうな感じになり、暑い夏を乗り越えられそうな気分になりませんか?
実際、かつて、湿気の多い日本の夏には、すだれはなくてはならないものだったようです。
すだれの効用といえば、窓や出入り口の軒や座敷の鴨居から垂れ下げるだけで、日よけになるだけでなく、通風、目隠し、間仕切りにもなります。
また、不要なときには巻き上げるだけで、視界がぐうんと広がります。見た目も涼しげだし、外から見ても美しい。
しかも、すだれは、日本の建物にみごとにマッチしています。
西洋のブラインドと同じ使われ方をするものですが、木造の日本家屋にはやはり自然の植物で作ったすだれが似合います。
さらに、すだれには「見せる知恵」もふくまれています。
たとえば、京都の夏祭りの宵宮の夕方など、家々に明かりが灯れば、すだれを通して屋内のようすが見え隠れします。
祇園祭宵山の京都の町では、そんな家の中に先祖伝来の屏風を飾り、すだれごしに外からみられることを意識した演出を施す屏風祭りがあり、
この日ばかりは部屋のなかが晴れ舞台です。すだれごしにみえる日本情緒には、思わず目を奪われるといいます。
今でも、窓のそとに日よけとして使うと、冷房の設定温度を低くすることができるので、かなり省エネになるそうです。
飾っているだけでも美しいすだれ。インテリアとしてもぜひ見直してみたいですね。
*『延喜式』・・10世紀初期の延喜年間に醍醐天皇(在位897〜930)の命で編纂された式。
「弘仁式」「貞観式」を改訂した律令細則を集大成したもの。康保4年(967)より施行。
とくに宮中の儀式や行事、制度などはのちの典拠とされた。
全五十巻のうち、第十四巻「縫殿寮」は、当時の衣服裁縫を司る役所に関する記載であり、
その中の「雑染用度」の項には、三十数種の色名と、それを染め出すための植物染料、その他の材料が列記されている。現存。