スタッフN村による着物コラム

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和裁を始めた友人に情報をもらって、中野の古着屋さんに出かけました。

オタクの聖地・中野ブロードウェイに本店があり、月に一度近くの催事場で反物の売出しをするというので。

気合を入れるために今夏初めて着物を着ました。夏川唐に母の八寸を改造した半幅ですが、まあ暑いのなんの。

店内は木綿や紬や浴衣や八掛や未使用の反物が山と積まれて、1000円から3300円の激安価格。

品物はピンキリですが、その山の中から好ましい青の紬を1反引っ張り出しました。税込み3300円也。

シャリ感があって単衣に良さそう。証紙を見ても何紬なのかわかりませんが、絹100%なのは間違いない(と思う)。

友人に縫ってもらうので湯のしだけ頼めるところはないかと、ネットで見つけた国立市の悉皆屋さんを訪ねました。

きれいに見えてもやはりカビが入っていて、両面洗い張りしてもらうことになり、反物代ちょい超えのお値段。

それでも激安には変わりがないし、お店の人もこれは掘り出し物だと思いますよと太鼓判。

出来上がりが楽しみです。友人も反物を溜め込んでいるので、いつ縫い上がるかは全然わからないんですが(笑)。

 

115.春風亭一之輔独演会

すっかり毎年8月恒例となった春風亭一之輔の独演会。

今年は最近落語に興味を持ち始めた姉と友人夫婦2組を誘って出かけました。

一之輔は去年まで、落語好きの間ではつとに知られた存在でしたが、今年笑点メンバーとなって知名度急上昇。

チケット取りもかなりハードになり、

会員先行予約日に45分電話をかけ続けてようやくゲット(今どき電話というところが立川ですね笑)。

猛暑続きの8月なかば、着物はさすがに諦めましたが、

それでもびしっと夏着物でキメた人を3人ほどお見かけしました。マジ尊敬。

さて、毎年恒例一之輔のフリートークから始まります。Tシャツに短パンスタイルもいつもどおり。

さっそく最前列のお嬢さんをイジり始めます。どこから来たの? 昭島(立川の隣町)?知らねえなあ(客席笑)。

学生さん?え、大学院生?(客席ざわつく)どこの大学? 筑波大!?(客席さらにざわつく)。

なんだよ、筑波大がそんなにすげえのかよ、日大芸術学部じゃダメか!?(客席爆笑)。

え? 知り合いにチケットもらったから来た?(客席笑)俺のこと知ってた?

笑点見て知ったって?(客席爆笑)

言っときますが仕込みじゃないからね! と言ってましたが、

イジる対象としてはこの上ない人選でした。やはり笑点は偉大です。

開口一番は一之輔が今一番大好きな二つ目だという三遊亭ふう丈。

名前からして圓丈一門の新作派。

ちょっと苦手なタイプだったので寝落ちしてました。続いて高座着に着替えた一之輔登場。

一席目は『かぼちゃ屋』。

二十歳にもなってぶらぶらしている与太郎、叔父さんの世話でかぼちゃの振り売りをすることになった。

大きい方は十三銭、小さい方は十二銭、これは元値だから上を向いて売るんだと言われた与太郎、

客に値を聞かれると空を見上げて元値を答えたので、すぐに完売したが全然儲からない。

呆れた叔父さんが、上を見るってのは掛け値をすることだ、掛け値をしねえで女房や子が養えるか、と叱ると

女房も子もいねえと口答えしながら、しぶしぶまた売りに出た与太郎、今度は客に齢を訊かれて六十と答える。

六十にゃ見えねえ、せいぜい二十そこそこだと言われると、元が二十で四十は掛け値だと答える。

おいおい、年齢に掛け値をするやつがあるか、だって掛け値をしなけりゃ女房子が養えねえ、がサゲ。

一之輔の与太郎噺は私的には珍しいかも。

与太郎が妙に小賢しくて、アホなふりしてるように見えるのが個性的。

一番笑ったのは、商売に行く途中で、同じくかぼちゃの振り売りをしている伊勢屋の若旦那に声をかけるところ。

「どこいくの? 誓願寺店? あんなとこ行ったって売れやしないよ、やめときなー、へへへ、歴史を変えてやったぜ」

このセリフを解説すると、唐茄子屋政談という別の噺がありまして、

道楽が過ぎて勘当された伊勢屋の若旦那が、身投げ寸前のところを叔父さんに止められ、

心を入れ替えてかぼちゃの振り売りを始めろと送り出され、

ふと立ち寄った誓願寺店という長屋で事件が起きるんですが、与太郎はそこへは行くなとアドバイス。

それで歴史が変わるというわけですが、あまちゃんの花巻さん風に言えば

「わがるやづだげわがればいい」というノリですね(笑)。

一席目を終えてそのまま高座を降りず、二席目に入るのもいつものスタイル。

これも夏らしく『あくび指南』。あくびの指南所ができて、乙な年増の師匠らしいと、入門しようとする男。

そんなもん習ってどうすんだとあきれる兄貴分を無理やり連れてやってくる。

乙な年増の案内で出てきた師匠は中年男。あれは私の家内です、と言われ、男はやけくそで稽古を始める。

四季のあくび・夏バージョンということで、「おうい船頭さん、舟ぇうわ手へやってくんねえ、

舟もいいが、一日乗ってると退屈で、退屈で…ふわぁ(とあくび)ああ、ならねえ」(実際はもっと長い)

これを繰り返しやらされるが、早口でそそっかしい男にはなかなか言われたようにはできない。

見ていた兄貴分が「くだらねえものを稽古しやがって、待ってるこっちの身にもなってみろ、退屈で、退屈で…ふわぁ」

とあくびをすると、師匠「おや、お連れさんの方がご器用だ」がサゲ。

師匠がやってみせる夏の舟遊びの光景がいかにものんびりで、習う男のガサツさとの落差がおかしい。

亡き柳家喜多八で聴いたことがあるけど、あれは傑作でした。もちろん一之輔も十分面白かったですよ。

 

中入りあって、三席目は長講というのも恒例です。暑苦しい時期に暑苦しい噺を、と始めたのが

「植木屋さん、ご精が出ますね」おっと夏の定番『青菜』です。待てよ、暑苦しいか『青菜』?

『青菜』の筋は何度かここで紹介しているので省略しますが、亡き人間国宝・柳家小三治の名演は忘れられません。

前半の、お屋敷の庭の涼し気な描写、それを眺めながら味わう柳陰と鯉の洗いの冷たさ、『青菜』ってそういうイメージなんだけど。

と、思ったら、一之輔のは後半の、植木屋夫婦のドタバタが主眼でした。そりゃあ暑苦しいわ。

お屋敷の夫婦の優雅な暮らしぶりを真似てみたい植木屋は、

大工の友人を植木屋さんと呼び、次の間と称して押入れに女房を押し込む。

優雅といえばおすべらかしに十二単だと、女房は髷をほどかれ、綿入れを重ね着させられる。

そこまでされる植木屋の女房は初めて見ました。お屋敷の奥様は十二単なんか着てませんから(笑)。

とにかく抱腹絶倒、なんとも騒がしい青菜でした。来年の夏もまた立川に来てくれるそうです。

でもな、ないものねだりとは思えども、あのゆったりと優雅な小三治の青菜が恋しい気もします。

やっぱり一之輔は一年に一回くらいでいいかな(笑)。9月は同じ会場で昇太・宮治二人会。

どんなネタで来るか楽しみです。まあ、『青菜』はまずないでしょう。

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