スタッフN村による着物コラム

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西日本に大雨を降らせた低気圧は、関東に大雪…というほどこちらでは降らず、明け方には雨に変わってひと安心。

いつも庭の周りの雪景色をお見せしているので、今日は私の菜園風景です。葉牡丹のように見えるのは白菜。巻きそびれた出来損ないですが(笑)。

ニュースでは暖冬で巨大化しているというブロッコリー、なぜかうちのは育ちが遅れ、ようやく食べごろになってきました。

雪の下で健気に春を待っているのはスナップエンドウ。11月に種を蒔いて冬を越させ、暖かくなると爆発的に伸びてきます。

ツルが伸びてきたら手をくれる(支柱を立てることを当地ではそう言います)のですが、今はまだ、じっと我慢の子なのです。

 

86.新春たちかわ落語会 

117日ならまだ新春と言ってもいいだろう(笑)。去年もレポした立川はたましんRISURUホールでの新春落語会です。

ツレも去年と同じ高校時代の友人で、待ち合わせも高島屋の鼎泰豊。代わり映えしないので、今年は写真を撮りませんでした。

平日だったので予約できましたが、開店時間の11時なら予約なしでも余裕でした。麺と小籠包のセットを3人でシェア。女子会はこういうのがイイ。

デザートまで平らげて、いざ落語会へ。しばらく着物を着る機会がなかったのですが、この日は天気もいいので久々の着物。

とはいえ、立川だし(笑)、落語だし、仰々しいのも野暮だなと思い、相変わらずの木綿着物。

縦絣の久留米絣に、おなじみ祖母のお下がりの百年羽織。半幅帯は保多織。いただきものですが、この色は別注で染めたらしく、定番無地にはない色です。

着物と羽織が暗色なので、帯だけでも明るい色にしてみました。羽織紐はアジア雑貨屋で見つけたブレスレットです。

履物は色目がドンピシャの鼻緒の下駄。これは愛媛の内子座に文楽を見に行ったとき、内子座の前の出店で買いました。

男物の太い鼻緒で安定感があり、履いていても食い込まなくて楽です。足袋は保多織のネル裏でぬくぬく〜。

さて落語は春風亭小朝、柳家喬太郎、柳家三三の三人会。小朝はなんとなく敬遠していて、生で見るのは初めてです。

顔写真に折り目が入って、なんだかぼかし入れたみたいになっちゃった(笑)。

喬太郎、三三はここでも何度か紹介していますね。開口一番の前座は春風亭昇太の弟子で昇りん。リンゴ農家の三男坊なので昇りん。

三兄弟がまったく違う職業についていて、夢破れた者が実家に帰ってリンゴ農家を継ぐ約束だ、というマクラはどこかで聞いたことがあるから初見じゃない。

ふと、マラソンランナーの服部勇馬、弾馬兄弟を思い出しました。三兄弟が陸上をやっていたが、長兄、末弟のために次兄が家業を継いだとか。

おっと、そんなことを考えていると箱根駅伝に話が飛びそうになるのでここはぐっとこらえて(笑)、ちょっと永山絢斗似の二枚目でしたよ昇りん。

続いて真打ち。常識的に言うと一番若い三三からですが、なにやら釈台が運ばれてきた。講談や、上方落語で使われる座机みたいなアレです。

三三がこんなの使うのか?と思っていたら、まさかの小朝登場。三人の中で最も年長で、真打ちになったのも、もちろん飛び抜けて早い。

例の金髪トンガリ頭で、袴に派手な着物、昔から変わらないソフトな語り口、やっぱり高座に華がある。

平日の昼間、この駅からビミョーな距離にある(歩くと20分くらいかかる。このホールでは定番のクスグリ)会場に一杯のお客様、

近頃の若い女性が湯呑を片手でわしづかみはいかがなものか、こう片手を添えると優雅ですよとやってみせ、雑談ぽいマクラから、

話は戦国時代の近江長浜へ、おなじみ山内一豊と千代のお話。講談ネタなので釈台があるんだろうが、語り口は変わらぬ漫談調。

かるーい調子は最後まで変わらず、声良し口跡よし姿よしなのに、こんなものかとちょっと食い足らず。トリだと思っていたのでよけいにそう思っちゃう。

続いて三三。若い頃は年に似合わぬ爺むささが違和感ありでしたが、ようやく年相応になってきたのか、風格さえあります。

最年長者がトリを取らないなんて、とぼやいて笑わせ、噺は寒い季節にピッタリの(この日は異様に暖かかったけど)『二番煎じ』。

町内の旦那衆が火の用心の夜回りをすることになり、二班に分かれて交代で回ろうということに。

慣れない上に寒さも寒し、拍子木を懐の中で打ったり、金棒を持つ手が凍えると言って袖で覆ったり、「火の用心」の声が謡になったりとどうも締まらない。

そのうち、かつて吉原の若い衆だった男の名調子が出て、なんとか番小屋に戻り、次の班へ交代となる。

火の回りに寄って一息つくと、酒を持ち出す者、猪の肉(味噌で味付けしてある用意の良さ)やらネギを出す者、背中に担いでいたという鍋を出す者、

一膳しかない箸で猪鍋を回し食いしてワイワイやっていると、見回りの役人がやってきた。一同慌てて隠すが見咎められてしまい、

風邪気味なので煎じ薬を飲んでいたとごまかすと、役人は、拙者も三日前から風邪を引いておる、その煎じ薬をよこせと言う。

一杯が二杯、三杯となり、あいすみません、もう一滴もございません、と言うと、さようか、拙者もうひと回りしてくるゆえ、二番を煎じておけ、がサゲ。

漢方薬は煎じ薬が多く、二合の水で一合になるまで煮詰めるという具合ですが、

その出がらしに水を加えて煎じたのを二番煎じといいます。老婆心ながら(笑)。

三三は喉もいいので火のうーようーじん、さっしゃりましょうーの掛け声もよく、柳家伝統の飲み食いの所作もお見事。

酒を飲むところで、おっと、こうやってね、片手を添えるのがいいんですよね、と、小朝のクスグリを受けて笑いを取る。

これ、前の演者の話を受けるのは、喬太郎の得意技だったんだけど、近頃誰でもやるようになった。三三までやるんだ。

ツレは二人とも初心者で、喬太郎以外は初めて見るんだけど、『二番煎じ』はEテレの『落語ディーパー!』で見て知っていました。なかなか勉強熱心。

しかし、あの番組、東出昌大メインだから当分やらないだろうなあ…もし離婚なんてことになったら、番組終了かなあ…残念だなあ…てなことはさておき。

トリは喬太郎。こちらも小朝がトリを取らず、さっさと次の仕事に行っちゃいましたーとぼやき。

アレですかね、やっぱり金髪のほうが銀髪(喬太郎は40代の頃から総白髪で、しばしば師匠より年上に見られる)よりエラいんですかね、と笑わせる。

噺はと言うと、お、これは初見の『転宅』だ。喬太郎演目コレクションがまた一つ増えるのは喜ばしいぞ。

粋な黒塀見越しの松といえば妾宅と相場は決まっている。旦那が帰ったのを見計らって忍び込んだ泥棒、食い残しのお膳で一杯やっているのを妾に見つかる。

女は動じるどころか、あたしも昔は掏摸で、今の旦那とは別れることになっている、誰かこんなあたしと一緒になってくれる人、いないかしらと流し目。

舞い上がった泥棒はすっかりその気で、今夜は泊まっていくと言い出すが、二階に旦那が雇った用心棒がいるので、今日のところは帰ってちょうだい、

明日三味線を弾くのを合図にまた来ておくれ、と言われ、夫婦約束のしるしにと紙入れまで預けて帰る泥棒。

翌日妾宅の周りをうろうろしても、一向に三味線は鳴らない。しびれを切らして向かいの家を訪ねると、喋りたくてウズウズしていた向かいの主人、

いや、昨夜あの家に間抜けな泥棒が入りましてね、と、昨夜の話を事細かに泥棒に聞かせ、だってあの家、平屋ですよ、二階なんてありませんよと爆笑。

あとが怖いからと女はすでに引っ越したあと。すっかり騙された泥棒、一体あの女は何者ですと尋ねると、田舎回りの女義太夫だったという。

そうか、どうりでうまく語られた、がサゲ。義太夫の「語り」と「騙り」をかけてる、なんて野暮な説明はどうでもいいですね。

喬太郎の真骨頂は、女が泥棒を口説くくだり。得意の現代口調で、「でもあたしい、もうこんなお婆ちゃんだしい、もらってくれる人なんていないわよねっ」

「え? いいの? こんなあたしでも、ホント? う・れ・し・い、うふ」てな調子で男をどんどん煙に巻いていく。

香盤(落語家の序列)通り、三三と小朝の真ん中なら、新作やったかもしれないけど、堂々の古典。そういやしばらく喬太郎の新作聴いてないな。

ここんとこ、ちょっとニンにないような噺や、未消化な感じのを聴いてたので、今回はニンもぴったり、久々に喬太郎節を満喫しました。

ツレAもすっかり喬太郎がお気に召したようで、次も誘ってねと言われたのはうれしかった。

そういえばこの二人、別の落語マニアの友人の誘いで、白酒、談春、喬太郎という初心者にはもったいない(笑)豪華な会に行ったそうな。

で、演目がそれぞれ『富久』『芝浜』『文七元結』だったそうで、もう話聞いただけで胃がもたれそうなヘビーネタオンパレード。

喬太郎は文七やりながらああ、新作やりてえーと悶えていたとか。ただ、ツレBの話で演目を特定するのはなかなかの落語クイズでした(笑)。

ほら! 『いだてん』でやってたアレ! えーと『富久』か? それそれ! あとなんだっけ、娘が身売りしてそのお金を知らない人にあげちゃって…

はいはい、死ぬんじゃねえぞオー、って、『文七元結』ね。『芝浜』はすんなり出たな。ふと、この頃が一番楽しいかも、と遠い目になった私でした(笑)。

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