スタッフN村による着物コラム

「オキモノハキモノ」 に戻る

この秋の叙勲で、小学校時代の恩師が受章され、同級生一同でお祝いのお花を贈ることになりました。

3年生から6年生まで4年間お世話になったK先生、80代後半になられてもお元気で、一昨年同窓会にご招待したばかり。

叙勲といえば胡蝶蘭だろう、ということで、車で10分ほどのところにある生産直売店を訪れました。

温室の中、見渡す限りの胡蝶蘭。ところで胡蝶蘭って、一本ずつの鉢を寄せ植えにするんだって知ってました?

だから予算に応じて3本立ち、5本立ちといくらでも増やせるんですね。私はてっきり一株が枝分かれしてるんだと思ってました。知らんかったー。

そゆわけで写真の鉢をラッピングして届けてもらいました。先生にもとても喜んでいただき、ミッション完了。

直売なので花屋で買うよりちょっとお買い得でした。ラッキー。

 

75.クイーンと喬太郎

いやいやいや、観ましたよ『ボヘミアン・ラプソディ』。

ふーん、フレディ・マーキュリーの伝記映画ねえ、ま、あたしゃ初来日公演の生きてるフレディ見てるかんねと思っていたんですが、

あんまり評判がスゴイんで、ひっさしぶりに映画館に出かけましたよ。これがシニア料金デビューであります(笑)。

いや参った。冒頭、いきなり「somebody to love」から全身が勝手にリズムを取り始め、声を出さずに歌ってる自分がいました。

フレディ役のラミ・マレックは本人そっくりという触れ込みだけど、フツーに演技しているときはフレディというより出っ歯のミック・ジャガー。

つか、フレディそこまで出っ歯じゃないぞ。その付け歯、おまえは原口あきまさか! 

しかし彼がブライアンとロジャーに出会い、バンドに加入してマイクを持ち、キター!「keep yourself alive」あららこりゃフレディだわ。

もうね、そこからは怒涛のクイーンヒットパレード。ほとんどの曲、歌える歌える!(声は出さないけど)。

スターダムを上り詰め、やがて栄光と孤独の狭間で引き裂かれていく姿は、ま、お決まりのスター伝記映画だけど、ゲイカルチャーの描写が新鮮。

ゲイに目覚め、女性の恋人との間が冷えていく中、フレディはヒゲのおっさん専門に惹かれていく。

フレディの生前、まだまだ世の中はLGBTに寛容ではなかったけど、今ならすんなりおっさんずラブも受け入れられる。

あのヒゲで女装のビデオクリップも、当時はギャグにしか見えなかったけど、案外マジだったのかしら。

そしてメンバーと離れエイズに冒され、どん底に落ちたフレディはライブエイドで復活。あのラスト20分の怒涛のステージ。

そこにいるのはクイーンだったよ。フレディも、ブライアンも、ロジャーもジョンも、もちろん音源は本物だし、ステージアクション完コピ!

もうあたりかまわず(というか会場みんな)足踏み鳴らし頭を振り、声に出さずに「ウィ〜 ア〜 ザ チャ〜ンピオ〜ン」

ハンカチくわえて号泣しながら歌ってた。歌い放題の上映会があるそうだけど、それ行きたかったなあ。だって歌えちゃうんだもん。

自分がこんなにクイーン好きだったことにビックリ。熱心に聴いてたのはサード・アルバムまでだったんだけどね。

そうそう、私はブライアン派だったんだけど、ブライアンの中の人がそっくりな上に本人より2割方ハンサムで大満足。ロジャー役は本人より可愛すぎかな?

ここでちょっとお宝公開。

じゃ〜ん、クイーン初来日公演のパンフとチケット半券です! 197551日、at日本武道館。フレディはまだヒゲなしの長髪です!

あの日私は確かに大きな玉ねぎの下でクイーンと共にいたのだなあ。見てよこの手作り感満載のチケット。今どき高校の文化祭だってもちっとマシだろう。

そしてチケ代3000円! 喬太郎独演会より安い! もちろん16歳の私は1ヶ月ぶん以上のお小遣いをはたいたはずですが。

そんなこんなで、還暦のバーサンをひととき16歳のコムスメに戻らせてくれた、魔法のような2時間15分でした。

 

さて喬太郎。当欄ではおなじみのあきる野市は秋川キララホールで独演会であります。

会場前の看板を見ると「当日券有り」の張り紙。ちょっと不安になる。だってかつて師匠のさん喬他の三人会で客入り4分の1だったことがあるもんで。

700席くらいの会場で、小三治、談春、笑点メンバーなら瞬殺で満席なんだが、喬太郎は田舎じゃそこまでメジャーじゃないからなあ。

客席を見渡すと、後ろの方、4分の1くらいが空席だ。案の定、マクラで「秋川の駅を降りたらポスターがありましてね、堂々と当日券有り!

…がっかりいたしましたけどね」とボヤキ。泣くな喬太郎、あんたの師匠はこの3分の1の客入りでも「寒い…」と言いながらちゃんと高座を勤めたぞ。

開口一番の前座は三遊亭白鳥の弟子の三遊亭ぐんま。意外に思われるかもしれませんが、群馬県出身です、と笑わせる。

白鳥は新作落語のレジェンド・圓丈の弟子で、前座名はにいがた。新潟出身だから。で、弟子もぐんまってわっかりやすい。

にぎやかに『初天神』。師匠のまともな古典落語を聞いたことがないけど、白鳥はできるのか?初天神。ま、師匠に習ったとは限らないからな(笑)。

で、真打ち登場。落語協会の普及公演で沖縄から高知、それから大分、福岡、佐賀などを回ったが、沖縄から高知に行くのになんと乗り換えが羽田!

もうちょっとうまく組めないものかとぼやいたあと、お得意のB級グルメ話。青森のフードコートでトッピングの選べる蕎麦屋があり、

チャーシューは合うがメンマは合わないとか、あれえ、こりゃ次はコロッケでそばに乗せられたコロッケの気持ちからまた『時そば』かあ? 勘弁してよ…

と、思ったら、「ごちそうさまあ、おいしかったですー」と違う入り。

おいおいあいつ10枚食ってったぜ、ようし、皆で金を出し合って明日は20枚食えるかどうか賭けをしようじゃねえかと若い衆。おお、『そば清』だ!

そばといえば『時そば』ばっかりで、今日もそうなら席を立とうとまで思ってたが、通じたわね? 昇太は聞いたことあるけど喬太郎では初めてだ。

翌日、20枚? とんでもございません、あたしゃもう昨日も食べすぎて苦しくて、とかなんとか言いながらぺろりと平らげ、賭金をまんまと懐にする男。

若い衆はアツくなり、翌日は賭金を吊り上げて30枚で挑むが、これも難なくクリア。見ていた他の客が「おいおい、あの人誰だか知ってんのかい?」

聞けばあっちこっちのそば食い大会で連戦連勝の清兵衛さん、通称「そば清」という有名人。悔しがる若い衆は賭金を一両に積み上げ、50枚で挑む。

商用でしばらく旅に出るので戻ったらやりましょう、という清兵衛、旅の途中の山中で、大うわばみが人間を呑み込む現場に遭遇。

苦しがるうわばみが岩陰に生えた赤い草をぺろぺろ舐めると、腹の中の人間が

すーっと溶けた。こりゃ強力な消化剤だと喜んで持ち帰り、勝負に挑む。

さすがに30を過ぎたあたりで苦しくなってきた清兵衛、一息つくと言って障子の陰に入り、例の草をぺろぺろ。

なかなか出てこない清兵衛にしびれを切らした若い衆が障子を開けると、そこにはそばが羽織を着て座ってた…。

ちょっとホラーな考えオチですね。『蛇含草』という演題もありますが、要は例の草は消化剤じゃなくて、人間を溶かす草だったんですね。コワイですね。

妙なくすぐりも入れず、カミもせず、ごく真っ当な『そば清』でした。とにかく『時そば』以外のそばネタは初めてだったので、それだけで嬉しい(笑)。

 

中入りあって、道楽にもいろいろありますが…といきなり始まる。ん、野ざらしか、年末だけに芝浜か?

「お前さん、お久がいないよ」おおっ!『文七元結』だ! やった、今日は初見ネタ2席だ!

『文七元結』は、当欄63で立川談春バージョンを詳しく書きましたので、今回はストーリーは省略。

談春版は本人も「文七元結2017.夏」ってことでと言ってたくらいに独特の演出が凝らされてましたが、喬太郎版は至ってオーソドックス。

左官の長兵衛さんが博打ですってんてんになって半纏一枚で長屋へ帰るところから始まり、娘のお久が身売りに行った佐野鎚の女将の説教も、

身投げしかけた文七に五十両くれてやる場面も、特段趣向を凝らすでもなく、しかし行き届いた語り口で、きちんと演じてました。

まあ、談春版が異常っちゃあ異常なんで、その異常っぷりは当欄63をご参照ください。

喬太郎はかつては古典落語を思いっきりハジけた演出で、新作スレスレの改変を加えたりしてたけど、最近あんまりそういうのやらなくなったなあ。

ここんとこ『品川心中』や珍しい『首ったけ』なんかを聞いて、真っ当すぎてもうひとつ物足りない感じがしてたんだけど、今日は良かった。

ふざけず、カマず、真っ当に楽しませてくれました。4分の1が空席の会場で、かえって闘志に火がついたか(笑)? 

喬太郎といえば、こないだまでNHKのドラマ『昭和元禄落語心中』で落語指導やってましたね。本人も酒で身を持ち崩した落語家役で出演してました。

主演の岡田将生や山崎育三郎も頑張ってたけど、一番上手だったのは与太役の竜星涼(私の中では『ひよっこ』のおまわりさん)だと思うなあ。

若い俳優に教える、ってのがいい効果があったのかな? ならば喬太郎、そろそろちゃんと弟子を取って育てるのもいいんじゃない?

だってあの白鳥にも弟子がいるんだから。そしてその弟子を前座に借りてるんだからさ。

 

なんだかんだ今年も勝手な感想を書き散らしてまいりました。来年もこんな感じでユルユル行こうと思います。どうかよろしくお付き合いの程を。

 

スタッフN村による着物コラム

「オキモノハキモノ」 に戻る