スタッフN村による着物コラム

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土用です。暑いです。

私の住む東京多摩西部は、まったくの空梅雨で、畑もカラカラ、荒川水系のダムも干上がりかけてます。

ウチは地理的には荒川水系なんですが、行政的には青梅市が多摩川水系なので、山を越えて多摩川の水が水道を流れてます。おかげで取水制限は免れてます。

全国各地でおびただしい大雨被害が出ているというのに、私たちは今日も空を見上げて雨を恋うています。少し分散してくれりゃよさそうなもんだ、

土用干し、というくらいなんで、梅干しを干し始めました。去年梅が不作でさぼったので、2年ぶりの梅干し作り。

シソの量を間違えて、所定の倍の量を漬けてしまいました。

大量のゆかりと黒く見えるほど濃い梅酢…どうしようこれ。

 

61.「うそつき」を作る 

7月ももう終りですが前回の続きなのでまだ6月1日のお話。都内にでかけることがめっきり減ったので、1度出るとあっちこっち回ることになります。

今回も乃木坂の国立新美術館から浅草へ買い物に行き、夜は池袋で友人と食事、と23区内を駆け巡る行程です。

地下鉄を乗り継いで浅草へ。階段を上がって雷門へ向かうと、そこには驚異の光景が広がっていました。

とにかく外国人だらけ。明らかな欧米人だけでなく、日本人かなと思う見た目でも、しゃべってる言葉は!%&%0)=~|=~で、スカーフを被ったムスリム女性も。

着物を着ている人がやたら多いんですが、見るからにレンタルで、記念写真を撮ってるようすはどうやら中国か台湾からの皆様。

浅草寺界隈をざっと見渡したところ、行き交う人は8割外国人、1割が日本の修学旅行生、その他の日本人は1割程度、って感じです。

噂には聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。お店はそこらじゅう免税店で、歓迎光臨のメッセージだらけ。

ついには着物を着たチャイニーズのカップルが欧米人の写真を撮ってあげている場面に遭遇。いやあ、グローバルだぜ、浅草!

 

さて、なんでわざわざ浅草まで出向いたかというと、事の起こりは友人から、もう着なくなったという保多織の着物をもらったこと。

サイズは合わないし、さりとて仕立て直すほどのものでもなし。

どうしたものかと思案して、そうだ、袖だけはずしてうそつき襦袢にしようと思いついたんですね。

で、以前取材でうかがった浅草の和装用品店で、袖無しのうそつきを売っていることを思い出しました。

その辺で安いうそつきを買えばいいようなもんですが、ついてる袖が無駄になるし、久々に浅草にも行ってみたいしで、足を伸ばした次第です。

新仲見世通りを六区のほうへちょっと奥まったところにあるTやさん。店に入るときちんとネクタイを締めた男性が「いらっしゃいまし」と出迎える。

おお、これだよ、「いらっしゃいませ」じゃなくて「まし」な。これぞ江戸、これぞ東京言葉よ。

袖無しの半襦袢ありますか? と尋ねると、今はこれしかない、と見せてくれたのは15センチほどの筒袖が付いたガーゼの半襦袢。

衿はしっかりついているので、まあこれでいいか。そうだここは福助のキャラコ足袋の全サイズがそろっているのだったと、足袋も見せてもらいました。

私の足は身長に比してとても小さく、「ほそ型」でもまだシワシワ。「ささ型」という一番幅の狭いのでないとダメなんですが、なかなか売ってないのです。

「ささ型23センチの4枚こはぜをください」と言うと、ささ型は5枚こはぜしかないと言う。昔はあったんだけどなあと思いつつ、ま、いいか、5枚でも。

取材でお邪魔したのはもう10年以上前。そのとき対応してくださった年配の店員さんもいらっしゃらなかった。いろいろ変わっちまったんだなあ。

老舗喫茶店の「アンヂェラス」で一服、と思ったら、「全席禁煙」の張り紙。これも世の趨勢と諦め、しばらく行くと「喫煙席あり」と書かれた喫茶店が。

迷わず入店。いまどき貴重なのよこういう店。オリンピックを前に禁煙条例云々かまびすしい今日この頃、こうしてはっきり表示してくれれば無問題でしょ。

アイスコーヒーでほっとして、浅草寺へ参り、人形焼きと豆かんを買ってと、しっかり観光客もやって池袋で飲んだくれ、西武線で帰宅。ほぼ東京一周ぢゃ。

 

さあて、材料も手に入って、うそつき作り開始。半襦袢の筒袖を取り、あらかじめ外して洗ってあった保多織の袖を合わせて裄を測るとあれれ?

ぜーんぜん短い! そうか、これは衿付きの肌襦袢だったのか! せっかく浅草まで買いに行ったのにー。こりゃ安い半襦袢をまた買って来るしかないか…。

数日放置してはたと思い当たったのが、レース袖のうそつき襦袢。そうだ、あいつのレース袖をこの肌襦袢に付けて、その胴をうそつきにすればいいかも!

こっちはれっきとした半襦袢だったので、測ってみると肩幅もバッチリ。ブチブチとレース袖を外し、保多織袖をくっつけて測ると、ギリギリ足りそうです。

縫い代を取ると私の裄には足りないので、突き合わせのジグザグ縫いでなんとか接合。それでも数ミリ足りませんが、どうせ既製品でもそんなもんです。

レース袖の方は肌襦袢にざくざく縫い付け、浴衣下に。紐がついてないので、さらしを切り、アイロンで折りつけて、姉にミシンがけしてもらいました。

じゃーん、これでうそつき一枚完成。材料費は間違って買った衿付き肌襦袢の1980円のみ。

保多織のうそつきは、晏で2枚あつらえて、それはもうヘビロテで愛用しています。半襟付けたまま洗濯機で洗えるし、春秋の袷の襦袢では暑い時期に重宝。

やわらかものの着物にはいかがなものかですが、ほとんど木綿、ウール、紬しか着ない私にはちょうどいいんです。

着なくなったり、おさがりでサイズの合わない着物や長襦袢の再生にも、この裏技、使えます。無理に胴だけ探さなくても、バーゲンの安いうそつきで十分。

襦袢に適さない着物もありますが、木綿なら保多織、阿波しじら、川唐なんかは使えるんじゃないでしょうか。

あ、もちろんリサイクルでなく、新品のうそつきを晏であつらえていただくのも大歓迎(ちょっと宣伝w)。

東京展の時にはお客様に熱烈におススメしています。お好きな色柄を選べますし、替え袖を何枚か作るお客様もいらっしゃいます。

興味を持たれた方は当HPの晏’sコーディネートのページから保多織コーナーへ進みますと、お値段等詳しい情報が掲載されています。

なんだか最後は宣伝っぽくなりましたが、私自身はリサイクルくるくるで、店の売り上げにまったく貢献していないというオチでありましたw

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