スタッフN村による着物コラム

「オキモノハキモノ」 に戻る

このコラムもなんだかんだで50回。ずっと見ていただいてる方も、たまにのぞいてみるだけの方も、毎度駄文におつきあいくださり、ありがとうございます。

さて、せっかくの50回なんですが、残念ながらここんとこ出かける機会がなく、ネタ切れなんであります。

そこで今回はいつも本文の前につけている近況報告的な短文をぐぐーっと伸ばしたような内容で、我が地元・青梅の街をご案内します。

写真は青梅駅の駅舎。昭和レトロを売り物にしている町にふさわしく、いかにも時代に取り残された昭和臭ぷんぷんの建物ですね。では、本文に続きます。

 

50.『クロスロード』と雛祭り

3月にBSプレミアムで放送されていたドラマ『クロスロード』、ご覧になりました? 舘ひろしと神田正輝と、あと平成の裕次郎も出てたな。

元・警視庁捜査一課のバリバリだったが今は青梅中央署のショムニに左遷された舘ひろし警部補、

その左遷の原因となった記事を書いて大手新聞社を辞め、今は青梅の地元紙「たま多摩新聞(!)」に勤める神田正輝編集長。

青梅山中の火葬場建設予定地から白骨死体が発見され、それが15年前の未解決強盗殺人事件につながって…というストーリーはまあどうでもいいんですが、

舞台が「西青梅市」で、青梅ロケバリバリ、小さな田舎町に石原軍団が大挙して(って三人だけど)やって来たので、地元ではちょっと話題のドラマでした。

ストーリーそっちのけでやれ青梅駅だわ、新聞社は駅前の空きビルの2階だわ、住吉神社の参道だわ、総合病院の食堂だわと大騒ぎ。

ドラマの印象だと、盛り場があったり、都心から急行電車で30分くらいの府中市や町田市くらいの感じだけど、青梅はもっと遠いし寂れた田舎町です。

舘ひろしも神田正輝もジイさんになったなあ、とそれはさておき、ドラマに登場したロケ地をご紹介してみます。

神田正輝が毎回打ち合わせに使っていた喫茶店は、青梅駅から5分ほど歩いた超レトロな町並みにあるカフェ「夏への扉」です。

ここ、私の記憶が確かならば、私が小学生の時に通っていた耳鼻科医院の建物なんですよね。50年近く前の小学生が、なんかレトロだなあと思ってた場所。

50年前に既にレトロだったんだから築何年なのか、横から見ると少し建物が「へ」の字に曲がってるような気も…。大丈夫なのか耐震基準。

そこからまた5分ほど歩いたところにある住吉神社。5月に開催される、ちょっと有名な青梅大祭はここのお祭りです。

本宮は大阪で、海の神様である住吉様がなんでこんな山の中に祀られてるのか、よくわかりませんが、

よくもまあはるばるこんなところまで、というような意味の歌碑がありました。昔の人もそう思ったんでしょうね(笑)

ドラマではこのあたりを舘ひろし警部補がよくウロウロしてました。いや、捜査してたんですけど。

本殿の前に車が鎮座しているのは、神主が乗り付けたのではなく、これから新車のお祓いをするようです。今でもやる人いるんですね。

振り返って石段を見下ろす構図はよく使われてました。多摩川とその向こうの丘陵地帯が見渡せるので、絵になりやすいのね。

住吉神社の参道を出ると、ドラマではあまり登場しませんでしたが、青梅名物レトロ映画看板がそこらじゅうに掲げられた商店街。

写真はよくメディアに登場する祭用品店。町並みとしてはちょっと異様なので、ドラマでは使いにくかったんでしょうな。

ここの向かいがネットでちょっと有名なサイトを持つ白木屋呉服店。その並びに青梅赤塚不二夫会館もあります。ドラマに登場した花屋もすぐ近く。

同じくドラマとは関係ないんですが、住吉神社から多摩川方向へ少し下ったところにあるのが、昭和の名建築・津雲邸です。

実はこのお宅に伝わる雛人形展が開催されていたので、それを見に行ったついでに町を散策したというわけです。

地元選出の元衆議院議員・津雲国利が昭和6年から9年にかけて、京都から宮大工を招いて建設した豪邸で、そらあまあ細部まで贅が凝らされてます。

8期22年に亘って君臨したまさに青梅のドンであります。青梅が未だにガチガチの保守地盤なのは無理もないか。

東条英機ら当時の重鎮も訪れたという由緒ある建物ですが、つい最近まで取り壊しの危機にあったそうです。青梅の文化程度推して知るべし。

地元の保存運動によって歴史資料館として存続が決まり、今は展示会やイベント会場として活用されてるそうです。今回の雛人形展もその一環。

江戸時代からの雛人形や雛道具、その繊細かつ精巧な細工は目を見張るばかり。コレクションといい建物といい、昔の政治家の権勢恐るべし、です。

さて、駅の方へ戻り、駅を通り過ぎてしばらく歩くと街道沿いに立つのが旧稲葉家住宅。江戸時代からの豪商で、織物問屋などを営んでいたそうです。

内部もよく保存されていますが、残念ながら「死んだ」建物ですね。東京都の有形民俗文化財だそうですが、なにかに活用できないものですかねえ。

稲葉家の先をまた多摩川方向へ少し下ったところにある金剛寺。ここは青梅の地名の発祥となったところとして有名です。

なんせあの平将門が、この地で持っていた梅の枝の鞭を刺し、「我が願い叶うなら根付くべし、その暁には必ず一時建立いたすべし」と誓ったそうなんです。

んで、その枝は根付いて将門がこの金剛寺を建立したというんですね。

将門の願いは結局叶わなかったわけで、この梅は夢半ばで斃れた将門の運命を象徴するかのように、黄熟せず青いまま落ちるのだそうです。で、青梅。

「将門誓いの梅」という案内板がありますが、もちろん将門手植えの梅である訳もなく、何代目かの木で、今も青いまま落ちるそうです。見たことないけど。

将門大河『風と雲と虹と』はもう何十年前になるんでしょうか。あれで大河デビューした草刈正雄がいまは真田昌幸。昔も今もカッコいいですね。

さて、青梅駅に戻り、改札を入ると、ホームへの通路の壁も両面映画看板が埋め尽くしてます。

話もドラマ『クロスロード』に戻ります。最終回のラスト近く、舘ひろしがホームの待合室で靴ひもを直し、外へ出て来ます。

それがこの待合室。わざとレトロに仕立てた待合室やベンチ、これじゃ駅舎も新しく建て替えたりできないよな。

そして夜のホームに少し距離を置いてたたずむ舘ひろしと神田正輝をロングで捕えたショットでラスト。終電後の撮影でしょうが、ちょっと胸熱。

しかし青梅駅の発車メロディは「ひみつひみつひみつひみつひみつのあ〜っこちゃん♪」であります。次の場面でこれが流れたらと思うと…(!)

 

スタッフN村による着物コラム

「オキモノハキモノ」 に戻る