スタッフN村による着物コラム

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50年に一度というような豪雨が日本各地を襲い、関東だけはぎらぎらと太陽が照りつける猛暑。

あまりに異常なこの夏、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

災害に遭われた地域の方々に、及ばずながらお見舞い申し上げます。

異常気象と関係があるのでしょうか、うちの裏山にニホンカモシカが現れました! ホントに、家のすぐ裏手です。

もちろん天然記念物です。天然記念物なもんで、あいつら人間が危害を加えないって知ってるんですかね、カメラを向けても逃げやしない。

じーっとにらめっこを続けたので、こーんな写真が撮れてしまいました。

普通の一眼レフのズーム機能でこれだけ寄ってますから、彼我の距離5メートルくらいでしょうか。

子牛ほどの大きさがあるので、さすがにそれ以上近寄るとコワいです。

夢中でシャッターを切りましたが、あとで冷静になって愕然。

私はいったいどんなところに住んでいるんだろう…orz

 

36.大人の新感線『ラストフラワーズ』

大人の新感線、って、劇団☆新感線が大人っぽい芝居をするんだと思い込んでましたが、大人計画とのコラボだから「大人の新感線」なんだ、

って会場に着くまで気がついてなかった間抜けな私です。

うだるような暑さの8月15日、東京都心の人口が最も少なくなる日ですが、赤坂ACTシアターは超満員。

いつもの新感線公演のように人気俳優やアイドルの出演がなく、ほとんど両劇団員だけの公演で、こんなにチケット取りが難航するとは思いませんでした。

各プレイガイドの先行発売に次々と敗退し、4度目の挑戦でやっと手にした2階5列目の一番はじっこ。これで最前列と同じ値段か!?

それでも取れただけよしとすべきなんでしょうが。

東京公演は終わりましたが、大阪公演はこれからなので、ネタバレされたくない方はこの先をお読みになりませんよう。

 

脚本は大人計画の松尾スズキ、演出は新感線のいのうえひでのり。主な客演は小池栄子のみで、あとはほとんど両劇団の団員。

とはいっても、売れてますからねえ、みなさん。NHKは特に『あまちゃん』前後から大人計画の役者をやたら起用したがってるよね。

以下、役者の名前にいちいちテレビでおなじみの役名を付記しますので、演劇ファンでなくてもNHK好きならああー、とおわかりいただけるかも。

なお、☆印が新感線、♠印が大人計画の所属です。

ストーリーは説明しだすとものすごく複雑で、字数がいくらあっても足りません。ざっくりいうとスパイものなんだそうですが、見た感想は「そうかあ?」。

広域暴力団・勝場組の組長(橋本じゅん☆)は、チンピラだった25年前、東欧カジノツアー中にテロリストの襲撃に遭い、

進化工学者を名乗るサルバドル博士(粟根まこと☆)によって、妊娠中の妻を人体実験の材料に差し出すことを条件に解放される。

双子だった胎児は進化人類として成人した。勝場組若頭・軍二郎と、兄の軍一郎(阿部サダヲ♠二役/『平清盛』の信西)である。

二人は実験の影響でワクチン不適合症を患い、しばしば発作を起こす。特に軍一郎は人前に出られないほど重症。

しかし進化人類としての能力はすさまじく、勝場組の勢力は二人の能力でぐんぐん伸張していく。

その勝場組と、在日オンドルスタン共和国系暴力団・辛龍会は新宿歌舞伎町のシマをめぐって対立抗争中。

会長のシン・ジョンホン(橋本じゅん二役)は、勝場組が経営するバー・文明専属歌手のnanana(小池栄子)と愛人関係にある。

実は彼女は国際未解決事件捜査班・ミッシングのメンバー。このへんでようやくスパイものっぽくなって来る(笑)。

ミッシングは5年前に大失策を犯して大幅に予算を削減され、nananaこと横山奈々子分析官はクラブ歌手、

つげ忠春(このネーミング、わかるヤツにはわかる)分析官(村杉蝉之助♠『あまちゃん』のアイドル評論家)は漫画家、

そして佐伯三蔵分析官(古田新太☆『あまちゃん』の太巻)は子だくさん貧乏生活をテレビバラエティに売って糊口をしのいでいる。

自弁で活動を続ける彼らの捜査対象は、謎の暗殺集団ラストフラワーズ。

さらにメンバーに今は更生したかつての爆弾魔・村西五郎(荒川良々♠『あまちゃん』の副駅長)が加わるが、本部がサイバー攻撃を受けて壊滅。

この攻撃に勝場組の影を察し、三蔵は勝場組に潜入、傘下の闇金融に配属され、

バー文明の元ボーイ犬塚ひろし(星野源♠『ゲゲゲの女房』のふみえの弟)と共に借金の取り立てに回る.

取り立て相手の落魄した元フォーク歌手・早川速男(宮藤官九郎♠『あまちゃん』の脚本家/このネーミングもわかるヤツには…だな)と、

彼を取材するルポライター・砂漠ひかる(平岩紙♠『ゲゲゲの女房』のふみえの幼なじみ)に出会い、捜査の糸口をつかむ。

そのとき、オンドルスタン共和国の独裁者、シン・ジョンオク将軍(皆川猿時♠『あまちゃん』の南部ダイバー先生、または『吉原裏同心』の暴力夫)

が全世界に向けて演説を始め、オンドルスタンが人を殺さずに国を滅ぼす未知の武器を手にしたと宣言。

テレビでそれを見たシン会長の母・ミンス(高田聖子☆)は驚愕する。将軍は彼女の元夫で、シンの父親だった。

早川は暗殺集団・ラストフラワーズの一員となり、将軍暗殺の密命を帯びてオンドルスタンへ。それを追うひかる、そしてミッシングのメンバー。

ジョンオク将軍が皇帝として戴冠し、新しい妃を迎えると知ったミンスも、息子を後継者として認めさせようとオンドルスタンへ渡る。

そしてこの一連の騒動の裏には、謎の大財団総帥・セレスティーノ(松尾スズキ♠『あまちゃん』の喫茶アイドルのマスター)の陰謀が…。

ぜーぜー、ここまででだいたい主な登場人物は出て来たかな? これでも細かい小ネタ的設定ははぶいてるんですぜ。

つか、ここまではパンフに載っているので書けるんだけど、この先はもう怒濤の展開でうろ覚えです。スイマセン。

オンドルスタンを操っているのは実は進化人類の勝場軍二郎、そして彼を作り出したサルバドル博士はセレスティーノ財団の手先。

彼らは人類ネアンデルタール人計画と称し、全人類の知性を原始人レベルにおとしめ、オンドルスタンによる世界征服を計画していた。

進化人類の軍一郎・軍二郎兄弟は、ワクチン不適合の発作が起きると、生きた人の脳を食べなければ死んでしまう。

原始人化した人類は、進化人類の食料として生かしておくのだ。

ミンスはシンとジョンオク将軍の親子関係を立証すべくDNA鑑定に持ち込むが、その時将軍はサルバドルの作り出した進化豚・ピッグ(皆川猿時二役)

にすり替えられ、将軍のDNAは豚のものであるという鑑定結果が。

不治の病に冒された早川は、死力を尽くして将軍暗殺を遂行するが、死を前に驚くべき事実を知る。

オンドルスタンで全国民が愛唱歌としている「ラストフラワー」という歌は、早川の唯一のヒット曲で、亡くなった彼の妻が書いた曲。

かつて日本に留学していたジョンオク将軍が気に入ってレコードを持ち帰り、将軍の愛する曲として全国民に浸透していた。

犬塚は早川の代わりにこの歌を戴冠式で歌い、絶賛を浴びる。

…あーもう細かい事は思い出せない。というか、細かい断片しか覚えてなくて、ストーリーとしてまとめらんない。

他の人のブログも見てみたけど、皆さんそうみたいなので許して下さい。

結局セレスティーノの陰謀は失敗に終わり、オンドルスタンもシンの子を身ごもったnananaが引き継ぎ、平和な国になった、らしい。

最後はオンドルスタンの大スターとなった犬塚こと星野源が熱唱する「ラストフラワー」で大団円。

小ネタ満載、エピソードてんこ盛りで、長尺3時間半。新感線の舞台は3時間超がもう当たり前だけど、さすがにくたびれた。

でも今回はちょっと新感線の舞台に飽きて来てた私にはなかなか新鮮でした。

なんだかんだいって、新感線という劇団は、どんなにおちゃらけても、どんなに深刻なテーマを扱っても、健康的なんだよね。

作者の中島かずきも、座長のいのうえひでのりも、まっすぐというか熱血というか、良くも悪くも少年漫画っぽいんです。

そこに大人計画の持つ「毒性」が巧く作用して、バカバカしいドタバタの中、背中にひやっ、ぬめっとした不気味さを感じる、

例えばこのオンドルスタンの扱いひとつだって、ちょっと前ならそっち方面の団体から猛抗議をうけそう。独裁者のDNAが豚だって!? 

軍二郎が発作を押さえるために生きた人の脳を食べる!? 中島脚本ならそこまでは絶対やらない。

「ラストフラワー」の歌詞も、「世界中の憎しみが終わらないのなら僕らは凍りついた花になろう」(うろ覚え)と、

一見‘70年代のフラワーチルドレンをパロりながら、もはやラブ&ピースでは解決できない絶望が歌い込まれている。

ちなみに、クドカン演じる早川が、自分の歌が独裁国家の国民歌謡となっていることを知り、今際の際に吐くセリフ、

「あの歌は…平和の歌だ」が、なんだか一番印象に残っています。

オンドルスタン語は昔タモリが得意にしていたようなデタラメ半島語なんだけど、あちらの言語をちょっとかじった私は、一つだけ本物の単語を聞き分けた!

高田聖子演じるミンスが吐き捨てた「シバロマ!」これは一時あちらのヤクザ映画ばっかり見ていた私が最初に覚えた罵倒語。

意味はまあ…このサイトにはふさわしくないので、興味がおありならググって下さい。

これら随所にちりばめられたビターな悪意とニヒリズム、まさにそれが大人計画にあって新感線にないもの、すなわち「大人の新感線」なのかも。

個々の役者については、やっぱり生の舞台で見る阿部サダヲの発声、滑舌、身体能力が群を抜いてる。

テレビや映画だとちょっと演技過剰になりがちだけど、体のキレがかっこいいなあ。

新感線代表の古田新太は、さすがに年齢と太り過ぎでアクションにかつてのキレがない。滑舌はもともとあんまり良くないしね。

宮藤官九郎は映像とあまり変わらない飄々とした演技だけど、暑苦しい演技陣の中では妙に目立つ。もうけ役でもあるかな。

小池栄子はボンデージ風の衣装が激似合いで、同性から見ても惚れ惚れする美乳。デビュー当時と変わらないプロポーションを保つ34歳に拍手。

アクションも歌もこなし、冒頭の「7日で世界を作るなんて神様やるじゃない、でもちょっと手抜き?」な歌は、皮肉な歌詞が印象的。

このボリューミーでありながら喉越しさっぱりなお色気、今一番好きな女優さんだなあ。和製ソフィア・ローレン(古!)と呼んじゃうぞ。

高田聖子は相変わらず巧い。貫禄十分のミンスと、佐伯の妻・みよ子の浪速のオカンぶりがこの人ならでは。

星野源は、大人計画の劇団員ではないけど大人計画事務所の所属なんですと。『ゲゲゲ』では」実直で地味な弟役だったけど、歌手だと知ってびっくり。

彼が歌い上げる「ラストフラワー」は感動的です。ギターがまったく弾けないという設定がおかしかった。

粟根まことと村杉蝉之助はキャラがかぶるんだ、というのも新発見。

いつも粟根が何役も兼ねるところを村杉に振って、粟根はサルバドル一役。そういえばクセのある声質もよく似てる。

総じて大人計画の人々は達者ですね。私は大人計画の舞台はほとんど見てないけど、新感線に客演で出てくると強烈な印象を残してくれます。

だから映像でも引っ張りだこなんだろうけど、普段はみなさんおとなしい常識人なんだそうな。

超人気劇団の初コラボ、次の機会があるとしたら、もうちょっとコンパクトで盛りつけ控えめにお願いしたい。

あまりにてんこ盛りで、中年以上の客にはちょっともたれぎみ。「大人」仕様でひとつ、よろしく。

 

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