スタッフN村による着物コラム
「オキモノハキモノ」 に戻る
あけましておめでとうございます。
全国的に寒さが厳しく、北日本では記録的な大雪とのこと、
皆様にお見舞い申し上げます。
当コラムもこれで丸一年、どうにか続けてまいりました。
チラシの裏にでも書いとけ! と言われそうなたわごとに、毎度おつきあいくださる皆様、あらためて感謝いたします。
今年も相変わらずチラ裏的な展開ですが、どうぞご笑覧くださいませ。
年末からガラス窓際に置いていた梅の蕾がようやく開きました。
一輪だけですが、この鬼のような寒さの中で健気なものです。
「梅一輪 一輪ほどのあたたかさ」(服部嵐雪)
ほんの少し、春を感じていただければと思います。
19.新春着物雑感
いやー、寒い寒い。何なんですかね、この冬の寒さは。
寒すぎて着物なんかとても着る気になれません。
つか、着ていく機会も場所もないんですがね。
とりあえずの予定が2月の甥の結婚式、っていきなりどフォーマル。
作ったときから甥の結婚式で着るつもりだった一つ紋の江戸小紋がようやく出番です。
とはいえ、それも今まで比較的カジュアルに着崩していたので、フォーマル用の小物がない!
あわててkimono gallery 晏から刺繍半襟と帯締めを送ってもらい、苦手の二重太鼓は京都のカクマさんに二部式に改造してもらい、
襦袢もとんと正絹の長襦袢なんか着ていないので、これもkimono gallery 晏に洗い張りを頼んでなんとか間に合わせる算段。
いやまあ、山奥に住んでいても、ネットとクロネコのおかげでなんとかなっちゃうありがたい時代。
姉が母の遺品の留袖を着たいと言うので、それもkimono gallery 晏で仕立て直し中です。
母の留袖を引っ張りだしていたら、ちょっとオシャレな物件がまたいくつか見つかりました。
母の遺品はほとんどあさり尽くしたと思っていたのですが、留袖には用がないのでその箪笥はよく見てなかったんですね。
まず、黒の三所紋つき紋紗の羽織があったので、これは袖に継ぎを入れて仕立て直し、縫い紋は自分で取ることにしました(頼むと高いのだ)。
それから、多分嫁入りで持って来たと思われる派手な留袖。これはアロハシャツにしてやろうかと画策中。
留袖アロハってかっこよくて、いつか欲しいなと思ってたんです。母が嘆くかな?
八寸帯が2本、なぜか6寸の博多帯が1本。これらはみんなカクマさんで4寸の半幅帯に仕立て直してもらいました。
6寸って使いようがなく、幸い博多(つまり単衣)なので、2寸折り込んで無理矢理4寸にしてしまいました。
ちょっと短いけど、変わり結びはしないので、なんとかなってます。
年末、屋外餅つき有りの忘年会に締めて行きました。
この日は雪がちらつくほど寒かったので、かねて画策していた「ユニクロ・着物コラボ」を実行。
以前から、インナーにはユニクロが大活躍で、全身ヒートテックで固めていたのですが、今回アウターにまで進出。
襦袢を着ず、ヒートテックのフリースタートルネックの上からウールの着物、その上にウルトラライトダウンベストを着て。
足回りはヒートテックのタイツ+保多織ステテコ+化繊の東スカート。もちろんエレガードを忘れずに。
ブーツ履いてやろうかと思いましたが、そこまでやると着物着ていく意味がないので断念。
タビックスの上にネル裏の保多織足袋を履いて、更紗模様の鼻緒の下駄。おかげでぜーんぜん寒さ知らずでした。
案外なじんでるんじゃないかと自負してるんですが、どですか?
冗談ついでに、帯留はアフタヌーン誌の付録だった『ぷーねこ』のバッジです。
ちなみに移動中はすっぽり大きなショールを羽織ってたので、道行く人にギョッとされることもありませんでした。
着物納めは冗談で、明けて着物始めがフォーマル。なんだかえらく振り幅の大きい2013年だなあ。
さて、これだけじゃちょっとネタ不足なので、かねて書きたかった演歌歌手の着物について。
ウチは父親が演歌大好きなので、夕食時に演歌番組につきあわされることが多いんです。
元ロック少女としてはしばしば辟易するんですが、巧い人の歌はやっぱりすごいので、ああだこうだ文句言いながら観ています。
ただつきあってるのもつまらないので、歌手の着物に注目してみたらこれが面白い! 俄然演歌番組大好きになりました。
いつ見てもかっこいいなあと思うのは、ダントツで石川さゆりですね。
50代半ばを過ぎていよいよ色っぽい。このあいだドレスで歌う19歳のときの映像を見ましたが、断然今の方が綺麗です。
注目は帯締め。なんでだか知りませんがいつも30度くらいに曲がってるんです。これがまずかっこいい。
んで、帯も着物もいいものを着てますが、実にセンスがいいのね。
基本的に女性演歌歌手は訪問着に袋帯、伊達衿つきが多いのですが、この人はまずあの野暮な伊達衿をめったにしない。
してても控えめに着物の一色をとっていて、どんくさい反対色なんかまずつけない。
そして柄の配置も地あきが多く、どどーんと全身を覆うような柄はほとんどないですね。
また、紬を衣装に用いる人はめったにいないのですが、この人はたまーに着ていることがあります。
歌にもよるんですが、あの官能的な『天城越え』じゃなく、しっとりした『風の盆恋歌』を、無地っぽい結城紬かなんかで歌ってるのを見たことがあります。
大御所の都はるみも個性的ですね。
この人は京都西陣の出身ですから、昔から凝った着物を着てますが、最近ますます面白いです。
漆の帯とか、あれ、伊達政宗の陣羽織から取った帯だな、とか、帯が凝ってます。結び方も変わり結びが多い。
以前、梅の季節に石川さゆりが梅の柄の訪問着を着てたんですが、横にいた都はるみは上半身に梅の柄がくる四君子の着物でした。
テレビ映りを熟知した選択だなあと感心したことがあります。
ま、なんといってもこの人は、舞台の端から端まで脛もあらわに駆け回り、肘までむき出しの着物パフォーマンスがかっこいいですが。
坂本冬美は最近洋服が多いですが、やっぱり着物のほうが素敵です。
去年の紅白では『夜桜お七』だったので、黒地に八重桜の中振袖でしたが、新年の「演歌の花道」で同じ衣装を着てました。
妙に気合いの入りすぎた紅白より、こっちのほうがコーディネイトがよかったような気がします。
収録は前後してるかもしれませんけど(笑)。
こないだ「BSにっぽんの歌」を見てたら、二葉百合子の『岸壁の母』を歌ってたんですが、
青に蒔き糊の地に荒波の裾模様の訪問着、金茶系の袋帯、帯に合わせた金茶の伊達衿で、青と金茶の2色でまとめたコーデがかっこいい。
わりとこの人は多色使いをしないですね。
高そうな着物を着てるなあ、と思うのは伍代夏子。杉良太郎の奥さんですから、お金持ちなのかな。
金銀使いの刺繍や箔ぎっしりの帯や訪問着をよく見ますが、正統派の美人だし、決して下品にならないところはさすが。
そのわりに代表曲ってあれ?なんだっけ?ではあるんですが。
でね、私が実は一番好きなのは神野美伽なんです。
紅白の常連というほどではないですが、実力派の中ベテラン。
男っぽい歌が得意で、あまり色気はなくて、髪はショートカット、顔立ちも水前寺清子似かな。
ショートカットなので、豪華な訪問着とかは当然ちぐはぐになりますから、いつもシンプルな着こなし。
以前、番組の企画で初代桂春団治をテーマにした芝居仕立てのショーを演じたときに、
春団治役の彼女が、モノトーンの抽象柄の着物と帯で、名古屋帯ではありますがぐっと低めに締めて、実にかっこよかったんですね。
それ以来注目して見ていますが、毎回いい趣味だなあと感心してます。
こないだは珍しい紬の着物でした。節は大きく目立ちますが、かなり光沢があるので牛首あたりかと思われます。
片身替わり風にグレーの縞を織り分けたベージュ地の着物に、白地に蝙蝠柄の名古屋帯。
『美しい着物』のグラビアあたりなら普通のコーデですが、演歌のステージではまずあり得ない衣装。もう吹っ切れてますね。
決して高価そうではない(いや、個人的には十分高価でしょうが)けど、ごてごての悪趣味な衣装が多い(失礼!)演歌歌手の中でかなり突出した存在です。
歌番組の出演者の中に神野美伽の名前を見たら、ちょっと注目してみてください。
それから、こうした着物巧者の歌手たちは、後ろ姿も注目です。
石川さゆりや坂本冬美はまずおとなしくお太鼓なんか結んでません。
最近カメラが後ろまで回る(たぶん帯結びも見せるアングルを指定されてる?)ので、お見逃しなきよう。
そゆわけで、皆さんふだんあんまり演歌番組なんか見ない方も、着物番組として見ると面白いですよ、という話でした。
スタッフN村による着物コラム
「オキモノハキモノ」 に戻る