スタッフN村による着物コラム
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青梅は寒いです! 全国的に寒いでしょう。
しかし山羊は元気です。
我が家の土手につないで、わずかに生えた青草を食べさせてます。
珍しく3頭がタテに並んだ瞬間を撮ってみました。
上から父・太郎、母・花子、娘のねーねです。
ものすごい食欲で、土手はあっというまにはげちょろけ。
春が待ち遠しいのは人間だけではありません。
3.歌舞伎ナニ見ル?ナニ着テク?<演目編>
前回は、歌舞伎入門にはまず役者に狙いを定めて観ることをお勧めしました。
また、着物で観劇する際に、役者へのオマージュをコーディネイトに忍ばせると、より楽しさが増すことも。
特に役者に思い入れがない場合、演目にちなんだコーディネイトもまた楽しいものです。
着物の柄には能や文楽、歌舞伎の演目から直接取材したものも数多くありますし。
今回は、2012年の二月から四月まで、執筆時点で演目が発表されている文楽と歌舞伎の公演について、
もし私が行くとしたらという仮定の下に、コーディネイトの工夫を考えてみます。
全部行きたいのはやまやまですが、実際に行けるのはほんの一部。さみしい(泣)。
えーと、まず二月の国立小劇場の文楽公演。
一部が「毛谷村」、二部が「すし屋」に「お夏清十郎」、三部が「寺子屋」に「日本振袖始」。
私はこの二部のチケットを取ってあります。「義経千本桜」のうちの通称すし屋の段。
この段は「義経千本桜」ではあるんですが、桜は全然出てこないんですね。
主人公のいがみの権太の衣装が、ぶっとい白黒の格子縞。その妹・お里の前掛けが黄八丈。格子のイメージが強いです。
黄色地にいろんな色の格子が入った紬か、白黒のみじん格子の紬にしようかな。
演目に“ちなむ”といっても、あまりストレートな、いわゆる“付きすぎ”は野暮とされるのが難しいところです。
お里の有名な台詞「お月さんもねねしてじゃわいなあ」にちなんで、月の柄の帯もいいかも。
一部の「毛谷村」は、主役の六助の衣装がちょっと貧乏くさくてね。
紅梅の枝が重要な小道具なので、梅、とくに紅梅をアイテムにしましょうか。
三部の「寺子屋」は「菅原伝授手習鑑」の一部ですから、菅原道真の紋所の梅でもいいんですが、この段の主人公は松王丸。
衣装は雪持ち松なので、雪持ち松の帯なんかあったら季節的にも最高ですね。
松の枝が重要な小道具なので、松はなんであれ吉。二月でまだ正月気分もありますから、松竹梅でもいいかも。
新橋演舞場は中村勘太郎の勘九郎襲名公演。
松嶋屋も応援に駆けつけてますが、仁左衛門の「河内山」は何度も観てるのでパス。
昼の部が「鳴神」、「土蜘蛛」、「河内山」か。
中村屋の襲名だし、鶴の柄が吉ですね。辰年だし、「鳴神」では竜が天に昇りますから、竜の帯はいいかも。
雷もアイテムのひとつ。私、雷雲の帯を持ってます。
土蜘蛛にちなんで蜘蛛の巣柄の襦袢なんかあったらカッコイイですね。
帯や着物が蜘蛛の巣ではちょっとやりすぎかな。
夜は「鈴ヶ森」、「鏡獅子」、「ぢいさんばあさん」。
なんといっても「鏡獅子」は牡丹に獅子ですね。
牡丹の季節には早いけど、寒牡丹というものもありますし、ここは牡丹で決まりでしょう。もちろん唐獅子も吉。
国立劇場は前進座の「毛抜」と「唐茄子屋」。
「毛抜」は難しいなあ。唐茄子屋のほうでカボチャの柄があったらそれでいきますか。
大阪の松竹座は変わった演目が並んでますね。
昼の部の「慶安の狼」、「大当たり伏見の富くじ」はどっちも観たことないです。
夜は「すし屋」に「研辰の討たれ」。
これは勘三郎が野田秀樹と組んだ「野田版・研辰」とは違う、原作バージョンでしょうね。故・実川延若のビデオで観たことがあります。
「すし屋」ならさきに述べたとおり。「研辰」は、ええと、わかりません(笑)。
染五郎と愛之助のがっぷり四つみたいなので、高麗屋か松嶋屋か、お好きな方にちなんでみては?
三月もいっぱいありますね。国立劇場では「一谷嫩軍記」。
「熊谷陣屋」の段は台詞を暗記するくらい観てますが、「流しの枝」は観たことないなあ。大河ドラマ「平清盛」にちなんでの上演でしょうか。
「流しの枝」は薩摩守忠度が主人公らしいので、桜で決まりです。
「行き暮れて木の下蔭を宿とせば花や今宵の主ならまし」という歌を詠んだ人ですもんね。
「熊谷陣屋」は桜の枝を切ってはならないという高札が重要な伏線。
なもんで、ここはもう桜、桜ですね。季節も三月。客席はさぞや桜の柄だらけでしょう。
新橋演舞場は昼が「荒川の佐吉」「山科閑居」。染五郎が佐吉デビューかあ。二ヶ月連続の大奮闘ですね。
これも桜なんだけど、もう一つは雪また雪。
「仮名手本忠臣蔵」の九段目で、山科にひきこもった大星を訪ねてくる戸無瀬が藤十郎。どっちに合わせるかで全然違います。
夜の部「佐倉義民伝」とは…地味! なんせ農民一揆の話だからなあ。
あとは「唐相撲」に「小さん金五郎」…知らない。「小さん金語楼」かと思った、ってそれじゃ昭和落語名人伝じゃん(笑)。
まあ、「佐倉義民伝」も雪です。三月で季節が遅れますが、昼夜共に演目に合わせたってことでアリかも。
メインじゃなく、雪をあしらうように使えば、なごり雪、ってことでどうでしょう。
平成中村座では勘九郎襲名公演で「一条大蔵卿」「御所五郎蔵」ですか。他の演目は未発表。
昼の大蔵卿は、平家全盛の世に、清盛から常盤御前を下げ渡された公家の一条長成が主人公。
源氏に寄せる心をカモフラージュするためアホを装ってます。数年前の大河ドラマ「義経」で、エビスさんが演じてぴったりだった役。
しかしこれといったアイテムがないなあ。常盤御前が清盛調伏に使う弓矢や大蔵卿の使う薙刀とか、ちょっと物騒なものですね。
夜の「御所五郎蔵」は舞台は遊郭、主人公は俠客。「晦日に月の出る里も、闇があるから覚えていろ」が有名な台詞。
こっちも難しい。五郎蔵といえば刀の代わりに尺八を差してます。そして帯は博多献上の独鈷帯。
ここは博多献上をきりっと締めますか。
南座は又五郎の襲名。播磨屋祭りの「秀山祭」ですから、ぱあっと揚羽蝶を飛ばしましょう。
演目は「御浜御殿綱豊卿」に「熊谷陣屋」、「俊寛」に「船弁慶」。
「熊谷」はさきに述べたとおり。重要人物の弥平兵衛宗清が文字散らしの襦袢を着ているので、そんなのがあったら粋ですね。
敦盛の生死が物語の鍵なので、敦盛といえば笛もいい。
「俊寛」は島流しの流人だから衣装はボロボロ。ヒロインが島娘の千鳥ということで、浜千鳥はアリかも。
「船弁慶」は能がかりの舞踊。前シテが静御前、後ジテが平知盛亡霊。
ううむ、平家の定紋も揚羽蝶なんで、やっぱり揚羽蝶しかないですかね。
四月の国立劇場は待ちに待った仁左衛門の「絵本合法衢」!
これ、去年の三月に上演されて、開幕数日後に大震災があり、中止になった公演のリベンジなんです。
私は震災の翌日にチケットを取っていて、どうにか劇場までたどり着いたら公演中止。
がっかりして振り替えチケットの列に並んだら、孝太郎さんがお客さん全員に頭を下げて謝ってました。好感度俄然アップです。
結局振り替えチケットも中止で、お金は返ってきましたが、未見の演目なので、再演を熱望していたんです。
チケット発売はこれからですが、何を措いても行くぞー!
でも、未見なのでアイテムも何もわかりません。四月ですから桜がギリギリですね。
唯一持ってる、変わり縮緬に桜の花びらがほんのちょっとだけ刺繍してある小紋を着て行こうっと。
大阪の文楽劇場は「加賀見山」「金閣寺」「お半長右衛門」。
加賀見山といえば草履打ち。ここは下駄じゃなくて草履ですね。
金閣寺もですが、とりあえず、桜、桜でいいんじゃないでしょうか。
金閣寺は囚われの雪姫が、桜の花びらを足で寄せて鼠の絵を描く爪先鼠が有名。
子年にもらった鼠と桜柄の手ぬぐいがあるんですが、これは「金閣寺」用と決めています。
「お半長右衛門」は通称で、正式には「桂川連理柵」。
上方落語好きなら「胴乱の幸助」という噺を聞いたことがあるかと思いますが、中に出てくる「お半長」という義太夫がこれ。
分別盛りの四十男と十四歳の少女が心中する、まあスゴイ話です。
ちなむアイテムはとくに思いつきませんが、なにもこんな陰惨な話にちなまなくてもいいでしょう(笑)。
最後はkimono gallery 晏にもほど近い(実は思ったより近くない)琴平は金丸座のこんぴら歌舞伎。
こちらも又五郎の襲名ですね。「草摺引」「一本刀土俵入」「戻駕籠」「義経千本桜」ですか。
まあとにかく揚羽蝶ですが、当然桜もいいですね。
「義経千本桜」は「川連法眼館」通称四の切の段ですから、主人公は狐忠信。
とくればアイテムは鼓。桜・狐・鼓で決まりです。
これは季節に関係なくしょっちゅう誰かが演じてる人気演目なので、このアイテムがあると登場機会は大変多くなります。
それにしても今年は大河ドラマの影響か、源平ものが多いですね。
五月以降もきっと多いでしょう。源氏びいき、平家びいきでアイテムを探すのも面白いかも知れません。
あ、ちなみに源氏の定紋は笹竜胆です。もちろん来年以降も使えますからご安心を(笑)。
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